2025.12.12
【Q&A】010 医療法人の理事の解任
Q 社団医療法人の理事を務めていますが、任期途中に、社員総会で解任を決議されました。理事の地位の継続を主張したり、損害賠償を求めることはできますか。

A
医療法人(以下、社団医療法人を前提にご回答します)の理事が任期途中に社員総会で解任を決議された場合、結論として、あなたは解任によって生じた損害の賠償を医療法人に対して請求することができる余地があります。一方、理事の地位の継続を主張し、地位そのものを回復することは原則としてできません。
以下に、法的根拠と具体的な権利について解説します。
☞医療法人の理事の解任と損害賠償請求権
1.理事の解任の原則(地位継続の主張の可否)
① 役員の解任権の原則
医療法(第46条の5の2第1項)には、社団たる医療法人の役員(理事・監事)は、いつでも社員総会の決議によって解任することができると定められています。これは、役員と法人との関係を委任契約に基づくものと捉え、法人の意思を尊重した規定です。
したがって医療法では、社員総会が解任を決議すれば、たとえ任期途中であっても解任の効力自体は原則として発生します。そのため、あなたは理事の地位の継続(復職)を主張し、その地位を回復することは原則としてできません。
② 理事の解任のための決議要件
理事の解任決議は、社員総会において総社員の過半数の出席かつ、出席した社員の議決権の過半数の賛成をもって決議されます(定款に別段の定めがない場合)。この手続を経ていれば、解任は有効です。もちろん解任のための決議要件を満たしていない場合は解任が無効ということになります。
2.任期途中の解任と損害賠償請求権
任期途中に解任された理事は、解任そのものが有効であったとしても、解任によって生じた損害の賠償を医療法人に対して請求できる場合があります(医療法第46条の5の2第2項)。
なお、解任の理由が理事の職務違反、善管注意義務違反などであり、これを法人側が立証することができる場合は損害賠償請求することができません。また損害の額は残任期に月額の役員報酬額を掛け合わせた金額として算定するのが一般的です。
実務上は、解任の理由に正当性があるか、理事としての義務違反が認められるかどうか、について法人と理事との間で見解の相違が生じ、民事訴訟等において激しく争われるケースが多いと思われます。
理事長と理事の意見や経営方針に違いが生じ、対立する場合は解任の是非や損害賠償に関するトラブルに発展することが多く、事前に関係者のヒアリングを行い、資料を整理するなどの準備を行うことが有効です。
弁護士法人海星事務所では、医療法人や関係者の方から理事の解任に関するご相談を多く受けております。解任に至るプロセスの在り方や紛争を未然に防止する施策等についてのご提案も行っております。
理事の解任をめぐってお困りの際はご一報ください。
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